フリーキャスター 佐藤 のりゆき
第1回 ニート君と団塊の世代

 2005年が明けるとあっという間に春。4月新卒の学生達が社会に出る事になる。ところが昨年秋の北海道の就職内定率は、高校生が20%、大学生が60%と、全国平均に比べて低く、依然北海道の厳しい経済状況がうかがえる。しかし内定率が低い理由はそれだけではない。若者のフリーター志向、さらにフリーターどころか、ニート(NEET)と呼ばれる若者の出現が大きく影響しているようだ。NEETとは英語の「Not in Employment,Education or Training」の頭文字による造語で、学校に通わず、働く気も無く、職業訓練を受けているわけでもない状態の人のことである。イギリスやアメリカでこういった若者たちの存在が問題視されていたが、日本でも既に60万人のニート君がいると推定されている。学校を卒業しても職につかず、ただブラブラし、親と同居し小遣いをもらい、携帯電話の通信料まで親に支払ってもらう。はたして、親が悪いのか、本人が悪いのか、それとも社会のせいなのか。
 我々の青春時代は決して裕福ではなく、「学校を出る」という事は、「家から出て自立する」という意味であった。卒業しても就職が決まらないとなると、不安でガタガタと身震いが起きるほど深刻な問題であった。
 しかしニート君達は、卒業してもやりたいことが見つからないと、あっさりブラブラ生活に入る。
 ある時、我々団塊の世代の男達4人が集まり、このことについて語り合った事がある。そのニート君達の親は、丁度我々団塊の世代である。どうもこの親達が悪いという結論に至った。世代間の競争に負けた男達、そんな父親達のせいであろうと。
 この世代の男達の青春時代は常に夢を持ち、そして熱い情熱を胸に秘めながら社会に出た。社会のリーダーを目指し、夜も眠らずにバリバリと仕事をしてきた。やがて日本は好景気となり、さあいよいよリーダーに向かってまっしぐらかと思いきや、直後の景気低迷、リストラとやらで40代後半の社員から辞めてほしいと、会社が言い始めた。そのうち若い社員からも煙たがられ、能力を受け継ごうともしない。リーダーへの夢は上からも下からも拒絶され、青春の野望はもろくも崩れてしまった。組織に、いや日本に失望した男達は家に帰り、息子や娘に「夢を持て」「仕事に情熱を燃やせ」と言う気力も無く、ただ沈黙するしかなかったのである。そんな親の背中を見た子供達は、親をバカにし、家に寄生し、やりたい放題になる、といった結論に、皆、寂しく納得したものだった。
 しかし団塊の世代の男達よ、(いや女性も)もっと自信を持とう。こんな風になってしまった今の日本で強く生きていけるのは、むしろ我々の世代である。厳しい競争社会の中で培った精神力でもう一度、夢に向かい、踏み出してみようではないか。定年退職なんて怖くない。逆にやろうと思えば、何にでも挑戦できる時代である。人生はいつも青春!そうすればニート君達もきっといなくなる。